「美優はダメ! 雄一(ゆういち)はお母さんの旦那さまなんだもの!」


あたしをお父さんから引き剥がしたお母さんがあたしに代わり、お父さんに力いっぱい抱きつく。


それに、お父さんは少し顔を赤く染めながら『こらこら』と困っているような表情を見せた。


それはあくまで表向き。本当のところは、全く嫌がってないんだもん。


ム~…と頬を膨らませて2人を睨んでいると、お母さんが急に振り返った。


「美優。もうそろそろ時間じゃない? いつもの日課。隼人くんを早くお迎えに行ったら? あっ……。これも幼なじみとしては使えるわよね」


お母さんは全くわかっていない。


1人で『うんうん』と納得している。


そんなお母さんを見ながら、お父さんがため息を深くついていた。


お父さんもわかってるんだ。


何を言ってもお母さんには無駄だって…。







 あたしはパタパタとキッチンに行き、お弁当箱に蓋をして、ナプキンで包む。


4つのお弁当。


大、大、中、小と並ぶお弁当の大と小を持ち、あたしはソファに置いているサブバックに詰め込んだ。


そして、慌ててリビングを出て行くときに


「お母さん。あたし、絶対に隼人とうそでも恋人になったりしないからね!」


言い捨てて、玄関を出て行った。




玄関を出るとあたしは思いっきり息を吐いた。


そして、キッと南条邸を睨みつけた。