こわばった顔でお母さんを見ると、お母さんはにっこりと微笑んで、


「やってくれるわよね?」


と、念押しをしてきた。


「あ………でも、あたしよりも隼人がそんなことOKするのかな………?」


あたしが断れなくても隼人が断ればなくなると踏んだあたしはお母さんに軽く聞く。


「ああ………。それなら、問題ないわよ。昨日のうちに隼人くんには私から聞いておいたから。そしたら、即答でOKの返事くれたわよ。問題ないわね~」


ポンッと軽く肩を叩かれ、お母さんを見たその時のあたしの表情はきっと誰にも言えないぐらい、恐怖の色を浮かべていたに違いない。








 「早苗。そんなに強引に話を進めて……美優も困ってるじゃないか」


まさに天の助け!


先ほどまで新聞を読んでいて口出し1つしてこなかったお父さんが眉を顰めた状態で新聞から目を離し、こちらを見ている。


「お父さんっ!」


あたしはうれしさのあまり、キッチンから飛び出し、お父さんに背中から抱きつく。


「お父さんだけだよ。あたしの味方してくれる人」


ギュ~ッと抱きつく腕に力を強めると、お父さんは優しくあたしの頭を叩く。


「こらこら、大げさだな。美優は………」


ポンポンとあたしの頭を軽く叩きながら、お父さんは優しい笑みをあたしに向けてくれる。


優しいお父さんが大好き。笑うと目じりに少し皺ができるその愛くるしさが大好き。


少し角ばった大きな手が大好き。


お父さんの全てがあたしは大好き。


少しの時間、お父さんの愛情を受けていると、いきなりあたしは首根っこを掴まれ、お父さんから引き剥がされる。