「麻衣やお母さんにも言われた。あたしは1番大切にしなければいけない人を間違っているって。あたしが本当に大切にしなくちゃいけないのは隼人の気持ちなのに、それなのに、あたしはただの自己満足だけで、誰も傷つけたくないと思ってた。だから、隼人を責めて………。そんなの、間違っているのにね」


「・・・・・・・いや………。美優は間違っているわけじゃない」


少しの間、黙っていた隼人はゆっくりとだけど、あたしに対して話しかけてくれた。優しい笑みを浮かべながら。


隼人はあたしのことをまっすぐに見たかと思うと、ゆっくりと天井を見つめた。


「俺もさすがに言いすぎた。美優に言われて、少し考えたよ。さすがに香取に対して、俺は酷すぎたよな。本当は、試しに付き合って欲しいと言われた時に、はっきりと断っておくべきだった。それを何も言わずに香取が彼女らしく振る舞うことも見て見ぬフリをしていた。それを勝手にしたからで済ませるべきじゃなかったよな。見て見ぬフリをした時点で俺は香取と付き合うことを肯定したことになっているんだから」


「隼人………」


「だけど、俺はやっぱり考えを改めることはできないんだ。俺が1番大事なのはやっぱり美優だから。香取の気持ちもわかるけど、それでもやっぱり俺は美優のことを1番に考えたい。だから、そのことで香取が美優を傷つけてくるようなことがあれば、俺は許せないし、また同じように香取にきついことを言ってしまうと思うんだ」