「宿題は自分でしなくちゃ、身につかないと俺は思うけど………」


そう。


そういうことをあたしはこいつに言いたかったの!


………って、えっ!?




自分の真後ろから聞こえてくる、聞き覚えのある声にあたしは振り返る。


そこにはニコニコと眩しい笑顔を向けてくる隼人が立っていた。




えっ?


なぜ、こいつがここに?


あの女子の群れは?


あたしはきょろきょろと辺りを見渡しながら、隼人の後ろをヒョイッと覗いた。




こわっ!!




あたしは殺気さえこもってそうな突き刺さるような視線を受け、後ずさる。


今まで隼人に群がっていた女子の方々がいつもなら、我こそはと競い合っているのに、そのエネルギーを全てあたし1人に向けている。


殺される………。


なんの迷いもなく、あたしはそう思った。


「ちょっと! 隼人、どうしてここにいるのよ。いつもなら、心行くまで彼女たちの相手してあげてるじゃない」



素知らぬ顔で歩いていく隼人に後ろからあたしは少し声を張って言う。


近づいて言えばいいかもしれないけど、あたしが隼人の後を追っている姿を見ると、余計に女子の皆さんの神経を逆なでする恐れがあるため、あたしはあえて、隼人には極力近づかない。


隼人は急に立ち止まると、地面をジ~ッと見て自分の足元から、ゆっくりとあたしの足元へと地面を這って、ゆっくりとあたしの足元から上へと視線を向けていく。


ねめつけられるように見られるとはまさにこのこと。


あたしは条件反射で自分の両腕を組むように抱き、自分の体を隠した。


なんなんだ、そのいやらしい目つきは………。


「別に………。今日は疲れたから」


そう一言だけ言うと、隼人は冷めた目であたしを1度見ると、ゆっくりと歩き出した。


な、なんなの、一体………。


今まで、どんなに疲れていようとも隼人が女の子たちを邪険に扱ったことなんてない。


いつも紳士的でどんなことがあろうとも学校では優しい姿を保っている隼人。


それを、彼女たちが隼人を追いかけることもできないオーラを出して拒否している。