「ねぇねぇ今週のblonde買った?」

「買った買った!もー超かわいいよね~」




入った教室は朝から賑やかだと思った。誰に挨拶を交わす訳でもなく、窓際の席に静かに鞄を置いた。



すぐ前の席に集まるクラスメイトがある雑誌を中心に黄色い声を上げている。今週発売されたばかりの新刊だろう。



「この新色良くない?」

「あ、コレかわいい~」

「今日ここの店寄ってこーよ」



キャピキャピ騒ぐ彼女達を前に、昨日出された科学の課題を取り出した。集まる一人がそれに気付く。



「あ、緑川さん課題やってきた?あとで見せて~」

「あ、ごめんなさい、昨日忙しくて…」

「えー珍しー、バイトとかやってんの?」



化粧ばっちりの大きな瞳で彼女は尋ねた。ゆるいリボンもカーディガンも私とは正反対。



「うん…そんな感じ」

「何のバイト?」

「えっ?う、裏方。近所のスーパーの」



不意をつかれて慌てて応えた。ふーん?と彼女が興味無さげに相づちを打つと、もう一人が彼女を呼んで話を終えた。