優しい表情をしたお母さんが私を見つめる。







「伊緒、今まで待たせてごめんね。」






「えっ……。」






私の身体に、お母さんの身体が重なる。








いつぶりかな……お母さんに抱きしめられて、頭を撫でられたのは……。







「お…かあ、さん?」






あったかい。






今まで感じた事のないような暖かさが身体いっぱいに広がってゆく。







そして、鼻をかすめるお母さんの匂いは、何十年ぶりに私の気持ちを安心させていく。







「伊緒、好きよ、大好きよ。今まで待っててくれてありがとね…。」






「ん…うんっ。」







ずっと求めていた言葉。







好きという、たった2文字のシンプルな言葉…。






まさか今になって聞けるなんて思ってなかった。







あれだけ先生に甘えて教官室で泣いたのに、今も涙は沢山でてくる。







「ひっく…うぁぁぁんっ」






「ふふ、よしよし。」






私も、大好きだよ。






お父さんもお母さんも、どっちも変わらないくらい大好きだよ…。