慌てて起き上がろうとするアリスに、僕は素早く近付き、そのまま馬乗りになる。

両手足をばたつかせ、アリスは必死に抵抗したが、左腕と右肩を押さえ込むと、僕の目をひたと見据え、やがて静かになった。

『大丈夫だよ、アリス。恐い事なんて、何も無いから』

なだめる様に、なるべく優しい声で話し掛けたが

息がかかる程近くで見るアリスは、何だか悲しく見えた。


僕に対しての恐怖心ではなく、僕を哀れむ様な悲しい顔。


優しくて悲しい顔だった。