だけど、命令していた大悪魔もいない、アリスも僕の事を覚えていない

そんな状況で、儀式を交わす意味なんて無い。

僕みたいに、自分の人生を悲観する、孤独な悪魔がまたひとり増えるだけだ。



僕はアリスに近付き、そっと手を伸ばした。

そっと頬を撫でようとしたが、僕の手はすり抜けて、もうアリスの体温を感じる事も、触れる事さえ出来ない。



『…バイバイ』


反応の無いアリスに向かって、僕は独り言の様に呟くと、そのまま背を向ける。

振り返りたくなる衝動を必死で押さえ、固く目を閉じて、僕は病室を後にした。