移転の知らせなど無かった。確かに無かった。ということは俺が場所を間違えていただけなんだ。

ならば正しい場所へ向かうだけ。

それだけで枯渇した俺の世界に潤いが蘇るのだ。


「思い出した! この道の一本向こうの道だ!」


謎なんてものはひとつ有力なヒントがあれば残りはスムーズに解けるものだ。

まさに今の俺は水を得た魚。いわゆる無敵モードに突入したってわけだ。

ペダルを漕ぐたびに風を感じる。

まるで俺を目的地……聖なる地へと案内してくれているかのような風だ。


「祝福の風……」


いや、これはただの祝福の風ではない。それよりも上位に位置する『妖精の祝い風』だ。

ただでさえ無敵モードの俺に、妖精の祝い風。


「勝てる……!!」


負ける要素など何ひとつとして存在しない。するはずなど無いのだ。


ハンドルを左に切れば待望のラーメン。


「ここだ! あったぜ行きつけのラーメン店!」


傷つきながらも決してあきらめず、遂に聖地へとたどり着いた俺。

しかし店は閉まっていた。