『考えごとを始めたら自分の世界に入る』

それが俺の悪い癖だ。

そういった人々は大勢いるが、『そういった人々』からも「あんたって考えごとはじめると自分の世界に入るよねえ」なんて言われるほどだから救いようが無いのかもしれない。

もちろんデメリットはたくさんある。

話を聞かなくなったらコミュニケーションに問題があるし、視界が狭くなって今みたく忘れっぽくなる。


「おっと、危ない危ない」


また信号をやり過ごしてしまってはかなわない。俺は考えごとを止め、信号を見続けることにした。

信号がめでたく青に変わり、左右の確認を行ってから無事、ペダルをこぎはじめた俺。

よし、順調だ。狂ったリズムは落ち着きを取り戻さねば元に戻らない。


「そういや何時だろう?」


腕をチラッと見ると時計が無い。


「あれっ?」


洗面所だ。洗面所へ置いてきたんだ。思い出した、顔を洗った後につけようとして……。