「敦君も準君も港君も、華音ちゃんの気持ちわかってると思うよ。Rainbowって幼なじみでできたバンドだろ?」


もしわかってたら、
今日の練習をサボる必要なんてないはずなのに。


「君たち4人はきっと、近くにいすぎてわからないだけだ。
でも近くにいすぎることは悪いことなんかじゃない。
お互いがお互いを尊重し合ってお互いがお互いを思い合って、
お世辞なしでRainbowが1番そういう絆が深いと思う」


この5年間を振り返るようにひとつひとつ思い出を呼び起こす。


「このスタジオって、よく音楽スクールの学生がくるんだけど、混合のバンドはいつも何もかもがバラバラ。
見えない男女の壁が存在するんだ」


“見えない男女の壁”


その言葉が胸に響いた。

今回、3人で手を組んだりしてる?

そんな風に無駄なことばかり考えてしまった。


「…だけど、Rainbowには
その壁が存在しない。華音ちゃんが唯一女の子だからってあの3人が遠慮したことあった?
会話がなくなることあった?
壁があるって思うことあった?」


急にさっきまでの柔らかい口調から少し強めになる。


Rainbowは、確かにメンバー同士遠慮はない。

そしてあたしは、メンバーとの間に壁を感じたことなんて1回もない。