「だよね!いつか俺らのバンドとコラボしたいけど、夢のまた夢かもなー」
“夢のまた夢”
幼なじみではじめた小さなバンドが誰かの強い憧れになっている。
それだけであたしは、
Rainbowのkanonは、
頑張れる気がした。
「夢じゃないよ!絶対に大丈夫!」
市原華音としてではなく、
kanonとして、ファンに声をおくった。
彼のバンドならコラボしたい!
そう思えたから。
「そういえば、名前きいてなかった!あの、なま…」
「おーい、合わせんぞー!」
5番の部屋から彼の声を遮るようにドラマーが顔を出す。
「やべ、俺戻んねーと!また今度!」
そのまま彼は5番スタジオに入っていった。
あたしは廊下に1人取り残された。
「『あたしは、Rainbowのギターボーカル、kanonです』って言っちゃえばよかったのにねー?」
腕を組んでため息をつく林さん。
ほんと、言っちゃいたかったな。

