涙を拭いて。



「は?誰に聞いたの!?」


顔だけ少しあげて、太一をみた。


「誰にも聞いてねぇよ。
瀬崎憐夏って名前をどっかでみた
ことあるって前から思ってたんだよ
でも、漢字似てるし、燐夏の間違い
だったのかなって思ってたら、昨日
たまたま、中学校の陸上大会の本を
みつけたんだよ」


憐夏は顔をさげ、目を腕で覆った。


「調べてみたら、全国大会の常連
じゃないか。中学の100メートル
記録と、幅跳びの記録はまだ更新
されてないみたいだし。中2で
この記録だすってお前怪物だな」


何も答えない憐夏。


「どうしてやめたんだ?」


「怪我」


かなり低いトーンで答えた。