涙を拭いて。



「そうだね。」


「憐夏って陸上やってたの?」


花以が聞いた。


「昔ね。中学の頃は全国大会の常連
だったんだけど、中2で怪我して
やめちゃった。」


「そんな大きな怪我だったの?」


花以が心配そうな顔になる。


「全治1ヶ月の怪我だったんだけど
1ヶ月たって治っても、憐夏は
走ろうとしなかったの」


「どうして?」


「俺らにもわかんねぇよ。あいつが
やめたかったんだろ。」


亜恋がそう言い放った。
花以にはチンプンカンプンだった。