でも先生は淡々と授業を進めていた。

『中倉も食べる?』

私が凝視していたら,小声でささやかれた。

『ん~・・・ちょっとちょうだい!』

私も小声で答えた。

すると高井はパンをちぎって、
教科書で隠しながら私に差し出す。

『ありがと。』

私が口パクで言うと、高井はニコッと笑った。

私も教科書で隠しながらパンを口に入れた。

美味しいチョコクリームの味がした。

先生は,黒板を書いている途中でだったから
バレずに済んだみたいだ。

唇についたチョコクリームをそっと手でふき取ると,
なんだか嬉しい気分になった。