ミサキは、あたしの訴えに気付いたらしい。

「クラスメートよ、クラスメート」

さばさばと、あっけらかんと答える。




  ヤラ コウタロウ
「屋良 幸太郎っていいます。陸上部です。短距離走ってて、専門は、200mです。身長は162cm。誕生日は5月です」



まくし立てるように自己紹介をされて、あたしは驚き以外のなんでもない。

呆気に取られてしまい、思わずポカンとするあたしとミサキに全く躊躇せずに、屋良くんは言葉を続けた。



「うちのクラスに来る立川さんを、ずっと見てました。好きです。付き合ってください」



告白されるなんてはじめてで、それも見ず知らずの人からなんて……



「……いや、あの、あたし……」

自分でも何を言っているのかわからなくなっていた。

明らかにあたふたしているあたしを

「立川さん」

屋良くんがやんわり止める。



「断らないで。だって立川さん、俺のこと、まだなんにも知らないでしょ」

よく見ると、その額にはじんわりと汗をかいている。

走ってここまで来たのかもしれない。



「とにかく。俺を振るなら、俺をよく知ってからにして。じゃあ、また」



それだけ言って、教室から出ていった。

あたしには、廊下を走っていく音だけが聞こえた。