部活は、30分後から。

1年生の頃は、準備とか色々あったから、もっと早く行かないといけなかった。

だけどこうして、後輩もできた今は少しだけ、余裕もある。



「……て、いうかね。あたしやっぱり、たっつんのこと、好きだよ」

ミサキがこれまでとは打って変わって、急に小さな声で話し出す。

たっつん、というのはサッカー部の人らしいんだけど、あたしは本名を知らない。

とにかく、ミサキはその人のことが好きらしい。



あたしには、好き、とかそういう気持ちがよくわからなくて、

「頑張ってね、応援する」

こう言うのが精一杯だった。



その、あたし達が小声でガールズトークをしていた時だった。



「……あの。立川さん」



急に名前を呼ばれた。

驚いて振り返ると、そこには体操服をきた、男の子。



「あれ?ヤヨじゃん、どうしたの」



ヤヨ……?誰……?
なんで知らない人が、あたしの名前呼んだの?



頭に浮かんだクエスチョンマークをそのままミサキに無言で訴える。