じっと目を見ていたら、

鳴海さんは首をかしげる。

「どうかされました?」

むこうは私を知らないらしい。

「いえ…どこかでお会いしたことがあるような気がして…」

「ふふっ、よく言われるの」

「そうなんですか?」

「日本人にありがちな顔立ち?」

頬に手を当てて笑った鳴海さんは、まぎれもなく美人。

こんな顔立ちが“ありがち”だなんて、日本人は美人大国になってしまう。

…そうじゃない。

絶対、どこかで会った。

そう確信したのは、

「美波、どこに行ったかと思ったよ…」

「ごめんごめん、ちょっとお話してて」

悠ちゃんがやってきて、鳴海さんと顔を合わせたとき。

「久しぶりだね“茅島くん”」

その言い方に、何かひっかかる。

悠ちゃんを見上げると、驚いた顔をしていた。

そして、喉の奥で小さくつぶやいた。

声にならない、声。

もしかしたら、口元だけが動いたのかもしれないくらいに小さく。


「…梓……?」


“あずさ”

その名前に、聞き覚えがある。

なぜだろう?




とおい昔。

突然の雨に降られて入ったカフェ。

偶然、目に入った光景。

“好きだけど、結婚してあげられないから…”

そう言った、悠ちゃんの前に座っていた彼女だ。