「お兄ちゃんは、将来はこの病院を継ぐんでしょ?」

「はぁ?だれがそんなこと言った?」

「だって、他に誰が継ぐの?」

「美波じゃねーの?悠哉くんか?」

またそんなデタラメを…。

お兄ちゃんは、いつもそう。

自分の都合が悪いとあーだこーだ。

それで、お父さんと喧嘩になる。

「さて、帰るか」

「えっ!?だって、まだ話…」

「どーせ理事会だ。夜中になるだろ?待ってても仕方ない」

あっさり。

そんなところも、お父さん似。

廊下をスタスタと歩いて行ってしまう。

私も、仕方なく引き上げる。






お兄ちゃんは、仕事があるからと言って、翌日には帰ってしまった。

あんなお兄ちゃんでも、一応はお医者さんだし。

仕方ないので、私ひとり。

院長室の前で待ち伏せをする。

今日も忙しいらしく、お父さんはやって来ない。

病院の外は暗くなってしまった。

明日出直すか…。

諦めて立ち上がると、むこうから足音おが聞こえてきた。

「…まったく」

お父さんは言った。

「美波、もう遅いから帰りなさい。お母さんが心配するだろ?」

「心配してるのは私たちのほうよ」

「…ははっ、そうだなぁ」

笑いごとじゃないんだけどな。