キッチンに立つと、悠ちゃんも後ろにやってくる。

「何作るの?」

「…何しよう?決めてない」

「オムライスがいいな」

「オムライス?」

「大好物なんだ」

「悠ちゃんが?初耳だよ」

「だって、美波に“子供みたい”ってバカにされそうだから」

バカにしたりしないけど、かわいいねって言うかも。

振り返ろうとしたら、悠ちゃんの腕が、私に絡みついた。

悠ちゃんの髪が、耳に、首筋に、頬に当たって、くすぐったい。

動けないよ…。

「…美波、好きだ」

私だって、好きだ。

好き過ぎて、ダメになりそうなくらいに。

耳にかかる、悠ちゃんの吐息。

つよく、つよく、抱きしめて。

こめかみに、悠ちゃんの唇が触れた。

腕の中で振り返る。

「悠ちゃん…いっこ聞いていい?」

「…その前にキスさせて」

私は、うつむいてキスを拒んだ。

キスしたら、聞けない気がした。

いつだってそう。

キスした瞬間に、心も身体も全て、悠ちゃんのものになってしまうから。

「どうして結婚しようって思ったの?」

悠ちゃんを見上げる。

すると、真剣な顔。

「美波を手に入れたかった」

思わず、息を飲んだ。

悠ちゃんの口から、そんな強い言葉を聞いたことなかった。

やがて、

唇は塞がれる。