Dear my Dr.

「寒い?」

「…ちょっと」

「まだ熱上がってるんだよ、きっと。温かくしてなよ」

そう言ってタオルケットを直して、悠ちゃんは立ち上がる。

行っちゃうの?

心細い…。

でも、わざわざ仕事から帰ってきてくれてるのに、ワガママ言えないもんね。

寂しいって言葉を飲みこむ。

そしたら、

「ふっ、そんな顔しないの」

って、ちょっと困った顔。

「僕はリビングで調べ物してるから、何かあったら呼んで?」

「……え?仕事は?」

「休み貰っちゃったし」

ケロッと言った。

えええ!?

いくら理事長兼院長の息子だからって、そんなこと許されていいんだろうか?

「患者さん放っておいていいの?」

「最近ね、アメリカ行きに向けて引き継ぎして、自分の患者は少ないんだ。だから大丈夫」

そういうことなら…

でも、申し訳ないなぁ。

「それに、今一番僕を必要としてくれてる患者さんがココにいるし?」

熱のせいでポーっとしてるけど、そのセリフにますます熱が上がりそう。

悠ちゃんは冗談っぽく言ったけど、それは本当だよ。

あなたがいてよかった。

心からそう思う。

「ゆっくりおやすみ」

私の額にそっと触れるだけのキスを落として、悠ちゃんは部屋を出て行った。

私は、点滴のしずくが落ちて行くのを眺めながら、静かに眠りについた。