私がそうだったから。

婚約者である悠ちゃんを愛し始めたのなんて、いつからかわからない。

とにかく、運命に任せていたら、本当に好きになっていた。

まぁ、よっぽど生理的に受け付けないとか…そんな感じじゃなかったし、

ある意味ラッキーだったのかな?



そんな立ち話をしていたら、悠ちゃんとはぐれてしまったことに気づく。

式典はそろそろフィナーレで、閉式の挨拶なんかも始まっている。

キョロキョロしながら周りを見渡すけれど…

見当たらない。

どこに行ったんだろう…?

ケータイを見れば、運転手さんからのメール。

“地下駐車場で待機しておりますので、終わり次第お迎えに上がります”

この文面だと、悠ちゃんにも同じメールが送られているはず。

あとで落ち合えばいいかな?

気楽に考えながら、奈保美と別れた。

式が終わり、運転手さんが迎えにきてくれた。

「お一人ですか?」

「途中で見失ってしまって…」

「悠哉先生のことですから、きっとどこかの先生方につかまってしまっておられるのでしょうね」

「どうしてわかるんですか?」

「坊っちゃんのことは、小さい頃からよく知っておりますから。御人好しで、話を切り上げるのが下手なのだと、ご自分でもおっしゃっておりましたし…」

悠ちゃんが“坊っちゃん”だなんて呼ばれていることに、ちょっと笑えてしまった。