霊感少年とメリーさん




『ク……クソッ。人間ゴトキニポイントヲ取ラレルトワ!』
「ははは!残念だな、相手が悪くて」

一方、陽一は自分が危ない状況に置かれているにも関わらず、ヘトヘトになっている腹黒ウサギに高笑いをしていた。

「まぁ、これも俺を見くびっていたお前が悪い。勝負ってのはな、最後まで戦わないと分かんねぇんだよ。先に決めつけるから、足下をすくわれるんだよ」

竹刀を肩に担ぎ、勝ち誇った表情を腹黒ウサギに向ける陽一。

『クソ……!覚エテオケ!次ハ、必ズ息ノ根ヲ止メテヤル!』
「止められるもんなら止めてみろ。また、相手してやるよ」

陽一の前に敗れた腹黒ウサギは、睨み付けてから煙突の中に戻った。辺りは静かになり、音は何一つ聞こえてこない。陽一は、ウサギが居なくなり床に座り込む。

すると、陽一以外誰も居ない道場から、ぐうぅぅと腹の虫が鳴り響く。陽一は、お腹をさすりながら溜息をつく。

あの腹黒ウサギのせいで腹が減った。ここに居る奴ら全員死んでるから、食い物なんてないだろうし……。早く家に帰りてぇから、早く来いよ!いつまで俺を待たすんだよ!

空腹のせいで、メリーに八つ当たりをする陽一。あまりにも、お腹が減り苛立ってしまう。

『クソがーーーー!』

心の中でブツブツ文句を言っていると、突然大声を上げながら乱暴に道場へと入ってきた人物に振り向く。

そこには、怒りを抑えきれずに肩を震わせる少年が居た。陽一と同様に整った顔つきで、歳は2つか3つ上に見える。背も少しだけ大きい。

髪は、光に透かされるたびキラキラと輝く金髪のウルフヘヤー。そして、漆黒の瞳には怒りが込められていた。

服装は、黒の動きやすそうな服装。上は半袖で、下は長ズボンをはいている。袖の部分だけは紫色。紫の袖の中から手先まで、白くて指のない手袋を履いている。

腰には、鞘(さや)に入れず剥き出しのまま刀を差している。しかしその刀は、刀身は木材で、黒色の鍔(つば)と赤色の柄(つか)で出来ている。本来、陽一が知っている刀とは違い、不思議そうに少年の刀を見つめた。

『絶対に許さねぇ。この俺を出し抜くとは……絶対に許さねぇ!』

一方、少年はブツブツと怒りと殺意が入り交じった言葉を放ちながら、陽一の横を通り過ぎて道場の真ん中に向かう。

『必ず見つけ出してやる……!ん?誰だ、貴様は?』

気がつくの遅すぎだろう……。

盛大な独り言の中、ようやく陽一の存在に気がついた少年。今頃になって、気がついた少年に、陽一は少し呆れる。しかし、その事はどうでもよくなり、気持ちを切り替えて立ち上がる。

「今日から、G.S.Sに入って退治専門になった織原 陽一だ。よろしくな」

陽一は、爽やかに挨拶を交わす。