霊感少年とメリーさん




何処までも広がる青空の中、太陽に一番近い場所---上界。その中には、現世で死を迎えた魂が生まれ変わるのを待つまで過ごす場所---天国。


一面に広がる緑の茂みと透明に澄んだ大きな川。太陽の光を浴びて、翡翠色が濃く光り霊結石が成る---霊結の森。そして、天国の中心の位置に白を基調とした城がそびえ建っていた。


城の中は全て純白で統一して作られており、白の中に居る者達は純白の服を着ていた。そして、広々としたある一部屋に淡い紫色の瞳に透明感のある水色の長髪で真っ白い衣装を着ている一人の男---第3代目神様が金色の王座に腰掛けていた。


『フン……。相変わらず、口が悪い男だな』


王座の横にある水晶玉で、暴言を吐き続けるボスを観察しながら呆れたように呟く。そして、右手に持っている銀色に輝く扇をパチンと閉じた。


『まぁよい。やっと気付いたんだ。許してやろう』


ボスの口の悪さは許せないが、罠にはめられた事に気がついている姿に満足して口の端を上げる。


『せっかく、面白い物が手に入ったんだ。それを利用して何が悪い』


詫びをを入れることなく、陽一を道具のように扱う3代目。すると、無表情で水晶玉に手をかざして振る。先ほどまでボスの姿が写っていた映像から、G.S.Sの廊下を歩いているメリーの映像へと変わった。


メリーの姿を目で捕らえて、フンと鼻で笑う。足を組み、偉そうな表情でメリーを見下す。


『特に小娘。お前は喜べ。これは、我からの褒美だ。小娘に会った時に、目覚めるよう封印しておいたんだぞ?』


メリーに、感謝しろと言わんばかりの口調で話す。まるで、自分のお陰で陽一に出会えたんだと。


そして、陽一の力は3代目によって封印されていたのを、ボス達だけではなく本人さえも気付くことが出来なかったのだ。


誰も自分の罠に気付かなかったのがよほど嬉しかったのか、口の端を上げて妖しく笑う。


気分が良いまま、また手を振る。今度は、練習場で腹黒ウサギと対決をしている陽一の姿が映り出された。


『そして小僧よ。我はお前に期待している。お前が、逃れる事の出来ない運命に殺されるのか。それとも、運命から逃れるのか』


妖しく口の端を上げる3代目。


『まぁ、生き残ったとしても許される存在ではないな……。何にせよ、我の期待を裏切るような事はするなよ?』


すでに、神としてやってはいけないことをしてきた3代目。3代目の居る部屋は、3代目専用の部屋の為、側近や他の上界人すら近寄ることの出来ない絶対領域。


決して、3代目の計画が外部に知られる事がない。それにより、闇に潜む狂気は常に陽一達を監視続ける事になる。ただ、時を迎えるその時まで。


神秘的な空間に、ふさわしくない不気味な微笑みを浮かべる。


『精々、悪霊(ザコ)に殺されないよう気をつけることだな。そんなモノに殺されたら、意味が無くなる』


何も知らない陽一に、忠告をする3代目。しかし、その忠告は自分の為だけにしている。


そして、またもや手を振る。水晶玉から映る映像は、ボス達から、メリーへと変わり、また陽一へと戻された。


『小僧だけではなく、他の奴らもだ。しっかりと、我を楽しませてくれよ。お前達は、我を楽しませてくれる暇潰し(ゲーム)なのだから。全ては、最高のフィナーレーを迎えるために……!』


嬉しそうに、天井のステンドガラスに描かれている天使の絵に手をかざす。そして、天使も不気味に微笑みながら3代目を見下ろす。


まるで、哀れな子羊を見ているかのように---。