『……確かに。お前の報告通り、“アイツ”にそっくりだ。お前こそどう思ってる?』
『彼は、あの人の生まれ変わりだと思います』
その言葉を聞いて、ボスと有奈はピクっと反応する。そして、メリーに気付かれないよう互いに目で確認しあう。
『だけど、“あの人”は……』
有奈は、重々しい口調で話すが言葉を呑む。危うく、メリーが聞きたくない言葉を言いそうになった。しかしメリーは、そんなことはお構いなしに口を開く。
『分かってます。だけど、あの特殊能力と容姿……何もかも彼にそっくりなんです!やっぱり、“あの人”の魂は消えてなかったんですよ!』
メリーは、嬉しくて興奮気味に話す。
この数日居ただけでも、ハッキリ分かった。あの人とずっと傍に居た私が、間違えるはずがない--!
ただ、メリーは自分の本能に従った。
『……確かに、その可能性もあるかもしれない。俺もあんな後だったから、冷静な判断が出来なかったし、あれ以上近づけなかった』
しかし、メリーとは反対にボスは深刻な表情をする。
『なら、仮に織原が“アイツ”の生まれ変わりだとする。お前は、織原にアイツの生前を話すつまりなのか?』
ボスは、ヒヤヒヤしながらメリーに尋ねた。一方、メリーは少し考え込むが、すぐに質問に答える。
『いいえ。彼には話しません。もし話をして前世の記憶を取り戻したら、彼が苦しむのが目に見えています。私はこれ以上、苦しむ姿を見たくありません』
決意が揺るがないように、話さないと宣言をするメリー。しかし、本当は前世の記憶を取り戻して、自分の事を思い出して欲しい。
だが、そんな事をして陽一を苦しめてしまうのなら、この想いを胸にしまって何事も無かった様に接すると結論を出したのだ。
『……賢い選択だな。だけど、お前はそれでいいのか?』
メリーの答えに安心したが、それでもメリーの想いが報われないのが息苦しい。それは、有奈も同じだった。なぜなら、メリーがあの人に対する想いをずっと昔から知っていたのだ。
『はい。それに“形”は違えど、彼と出会うことができました。それだけで充分です。それ以上は何も望みません』
そっと胸に手を添えて、決意をした強い眼差しをボス達に向ける。
『それに、自己満足だと分かっています。例え、彼が“あの人”の生まれ変わりじゃあなくても、彼を放っておく事は出来ません。
私の命……いえ、私の魂に懸けて彼を護ります』
真っ直ぐな言葉が、部屋中に響き渡る。
もう、今の私は昔の私じゃない。力もあるし、危険な場所でも彼を守れる。今度は、私が守る番。絶対に傷付けさせない。
拳を握りしめて、心にその誓いを刻んだ。
『そうか。俺たちも居るんだ、一人で抱え込まず頼れよ』
ボスは、メリーを娘のように優しい眼差しで見つめる。
『はい。ありがとうございます。では、失礼します。』
メリーは、深々とボス達にお辞儀をして部屋を出て行った。

