『私もそう思います。彼の力が強い反面、危険が伴います』

陽一よりも、後ろに居たメリーは手を挙げ、ボスに便乗して案に賛成する。

メリーは、ボスに凜とした瞳で見つめる。そんなメリーを見たボスは、陽一にバレない様に小さく溜息をつく。

『特殊能力のある人間と悪霊は、関わってはいけない。その為に、G.S.Sは、お前たちを保護している。言っている意味が分かるよな?』

その一言が、陽一の体にずっしりとかかる。以前にメリーから聞かされているので、理由を知っている。ボスの言っている事は正しい。

そして、陽一は、自分が置かれている立場を理解する。

「つまり、“力を封印して、悪霊やG.S.Sに関わった記憶を消して、何事も無かったかのように生きていけ”と言う意味か?」

保護をするという意味は、最初から、ここに連れて来て力と記憶を消す為の口実。これが、G.S.Sの対策。

陽一は、俯き悔しくて奥歯を食いしばる。手を強く握り絞め拳をつくり、体全体に力が入る。

『…そうだ。その方法が、お前を守るのに一番いいからだ』

ボスは、陽一の様子を冷静に見つめるが、その瞳には少しだか罪悪感が込められていた。

「…じゃ…ねぇ」
『『『え?』』』

ボソボソと言葉を零す陽一に、3人は声を上げる。

次の瞬間、バンッ!と机に拳を振り下ろす。静かになった部屋に、酷く響き渡る。

「冗談じゃねぇッ!見たことを無かったことにするなんて、ごめんだ!」

陽一は、ボスに負けないぐらいの鋭い瞳で、怒りをぶつけるように大声で言い放す。陽一の気迫に、3人は唖然とする。