「いや!お願い、離して!」

夕日の茜色の空が、ある学校の校舎を包み込んでいた。その校舎の教室で、悲痛に叫ぶ女の子が響き渡る。

少女は、下校時間が過ぎているのにも関わらず、制服を着たまま荷造りロープで身体を縛られていた。

「お願いします……このロープを外してください、西岡さん!「誰に向かって言ってんっだよ!」
「うッ!」

叫び続ける少女の態度が気にくわなかったのか、中学生にしてみれば派手なメイクをした少女--西岡は、ロープに縛られた少女の腹を何度も蹴る。

西岡が蹴る行為を止めると、縛られた少女はゲホゲホと咳き込み始めた。そんな、少女を見て西岡は気分が良いようで鼻を高くする。

「ちょっとやりすぎじゃない、愛子」
「いいのよ、雪菜。だって早河だもん。これぐらいやっても問題無いでしょ?」

縛られた少女----早河を気遣うように、西岡愛子に声をかけた雪菜。しかし、西岡は早河に詫びを入れる様子もなく、当然の行動だと言わんばかりに言葉を発する。

「あはは!さすが愛子!早河の苦しんでいる顔、マジウけるんだけど!」
「大声で笑わないでよ、理香!先生(あいつら)に見つかるよ」

西岡の行動に、お笑い番組を見ているかのように早河を笑う理香子。あまりにも大声で笑う理香に、雪菜は静かにするように注意をした。

一方、早河はこの絶望的な状況をどうしたらいいのか分からず静かに涙を流す。

「じゃあ、そろそろ始めよっか」

西岡の合図で、理香たちは教室の真ん中にある机を中心にして、周りにある机3つをくっつける。4つの机は、長方形の形に整えられていた。

早河は何が始まるんだろうと、不安な気持ちで状況を伺う。理香子達は、40cmぐらいの長さの筒状にされた紙を用意した。

そして、それを机の上に広げた。早河の目に飛び込んできたのは、白い紙に黒字であ~んまで50音順に丁寧に書かれている。中央の一番上に、印刷されたであろ薄暗い赤色の鳥居が貼られていた。

「さすが、理香ね。相変わらず綺麗な字」

雪菜は、文字を見ながら心の底から理香を尊敬する。

「まぁね、全国1を2連覇してるからそれなりにはね」

理香は、雪菜に字を褒められてとても嬉しい笑みを浮かべる。

「はいはい。早くしないと警備員に見つかるからやるわよ」
「「は~い」」

愛子のに急かされ、2人は準備をする。