あの日の朱雀




「パパに…」



「あぁ。」




私はいきなり言われた事に、納得できなかった。



ついさっきまで、夏休みの喜びをかみしめていたのに…。



どうして私は、最後に幸せになれないんだろ。




「おまえはもう高校生なんだし。自分で働いてどっかに適当に住め。この土地はもう売り払う事になったから。」



「…」



「もう俺に連絡してくんなよ。」



「…」



「これ、やる。」




差し伸べられた手に乗る指輪。




「おふくろの形見。最後の兄貴の優しさだ。」




触れたお兄ちゃんの手は冷たい。




「もうお前の荷物は3階にまとめてあっから。」



「…ぅ…」