私には誰かへ向けて叫ぶ声も
此処を飛び出す脚も勇気も
誰かから愛される表情もない。





…だけど、 君を見つけたの。





「姫…」


よく隣から聞こえる低い声。

その先もその前の言葉すらも
私には全然聞こえないわ。


だけどね、私にはこの低い
声しか知らないの。



隣に誰かいるのね…


でも私には聞こえない、見えない



この部屋は少し暗いけど、
小さな窓が一つあるの。



私には見えないの、
私以外の誰かを。




「姫…」





嗚呼、声が聞こえるわ。