「まぁ大輔は放っておいて」
水斗がそう言うと多季は続ける。
「で…その、ここじゃ言いづらいんで…あの、人もいるし…」
「? あ、ああ、分かった。じゃああっちに…」
「あ…ごめんね」
「いいよ別に」
二人は、人気のない方へと歩いていった。
水斗と多季はどこかへ行くのを、弘樹は黙って見ていた。
「水斗ズルい! 多季ちゃんにお呼ばれするなんて!」
大輔は悔しそうに二人の行った方を睨む。
「なぁ、大輔」
唐突に、弘樹が口を開く。
「…? 何スか、弘樹さん」
「多季ちゃん…だっけ。あの子、なんで水斗呼んだかわかるか?」
「?」
大輔は首をかしげる。
「何なんでしょうね一体」
「バーカ」
「痛ッ!」
弘樹は大輔の頭を小突いた。
「な、何すんですか!」
「そんなもん、見りゃわかんだろ。バカかお前は」
「い、いや、確かにバカッスけど! 何も叩くことないじゃないですか!」
「それはさっきのお返しだっつの」
「……」
大輔は何も言い返せない。

