「あー、あっつー」
体育も終わり、氷華は教室に戻っていた。
今朝割ってしまった氷は涼むためのもの。
教室に運んで、どこかいいところに保管しようと思ったところに大輔が来て、割ってしまったのだ。
手で扇いでみるも、わずかな風しか得られず、あまり涼めない。
「あー、大輔のバカー…」
思わず口に出して言っていた。
席でいかにも暑そうにしている氷華を、水斗はじっと見ていた。
教室のドアの影から。
実に怪しいが、今の本人はまったく気にしていない。
「……」
今がチャンスだ、と思った。
手にはタオルに包んであるひやひやのミネラルウォーター。
それを持って氷華のもとへ歩みよった。
ぼーっとしてたら、何かひやっとしたものが額に当たった。
氷華はびっくりしてとなりを見る。
「よ、だいじょうぶか?」
「…なんだ、水斗か…」
「え、なんだってなんだよ」
「わたし今、あんたに構ってられるほど元気じゃないの。だからどっかに…」
「氷華」
氷華の言葉を遮って、水斗が氷華の名前を呼んだ。
「…何?」
「あ…あの、これ、やるよ」
そう言って差し出したのは、ミネラルウォーター。
「…なめてんの? わたしが水なんて貰うわけないじゃない」
「いや…水じゃなくて、こっち」
水斗はひやひやのミネラルウォーターに巻いてあったタオルを解く。
それを氷華に押し付けた。
「ちょ、何のつもり?」
「べ、別に水でもないし、そっちならいいだろ。使えよ」
「……」

