「零」


お母さんの声が聞こえ、目が覚めた。

…エプロン姿に丸刈りの頭は、どう考えても性別女ではないけどね。

ずっとちっちゃい頃、まだここに入ったばかりの頃、試しに“お父さん”と呼んでみたら死にかけた思い出がある。


「あんた、今日入学式なんでしょ。早く起きなさい」


「うんっ」


「……あんた、今日はやけに素直ねぇ」


いつになく素直な私に、お母さんはびっくりしているようだ。

私はそんなお母さんににへらっと笑いかけて、階段を駆け降りた。