今日は遥の原付で,遥の誕生日プレゼント買いにいくんだ。
なんで今日に限って,壊れたオモチャが最後の力をふり絞るように,風に声が響くんだろう。
彼の名前を言う未佑は,妹の私が見ても‘きれい’だと思えるぐらい恋色に染まっていた。
…電話だった…。
私が前を通りすぎた瞬間,たまたま鳴った電話。
「緒方さんのお宅でしょうか……」
不自然に押してしまったスピーカーボタン。
「緒方未佑様が現在亡くなりました。」
パサッと後ろから花火の落ちる音が跳ねた。
…遥だ。
翼,何て…?なぁ、未佑は?
瞳だけは,いつも輝いていたのに。
暗く陰って,何も映さない。
聞こえてたよね。
落ちた花火が彼の心の様に散る。
遥,遥。
大丈夫だよ。
心配ないよ。
そんなこと言えない現実が。
亡くなりました…。

