風は淡く夏の匂いがして, いいことありそうな,梅雨明けの星空。 忘れもしない線香花火の香りと,彼の広い背中。 ねぇ,翼(つばさ)。未佑(みゆ)まだかな。 彼の声が痛いぐらい鮮やかに蘇る。 緒方翼 は、私。 未佑は私の姉で,彼の彼女。 彼の期待とは裏腹に,あの日から未佑が帰ってくることはない。 遠い遠い世界の人。