君に触れたくて…





「ありがとう、じゃあね」



あたしは彼女の家を後にした。



別れの時間がコツコツと迫ってくる。


泣かない!

あたしはそう決めた。



最後くらい、笑顔でサヨナラしなきゃ。



ここからが、あたしの一世一代の演技。




「……」




今日もまたお酒の匂いをさせながら、理音が帰ってくる。



心の準備はもう出来ている。




「おかえり!」



「あぁ」



「少し話しがあるの」



「…後にしてくれねぇか」



「ダメ!今日じゃなきゃ。とにかく座って」




あたしは理音を無理矢理座らせた。



多少驚きはあるものの、すぐに冷静さを取り戻す理音。




「今日、何の日か知ってる?」



「あ?…わかんねぇ」



「付き合って一年目の記念日」