女たちの甲高い声が聞こえる。
「お待たせいたしましたー…」
奥から、綿菓子を持った秋桜がくる。
2人の視線が重なりあう。
「…………」
「…………」
「…理音?」
梨加の声にハッと我に返った。
「あ…ごめん、いくら」
「…え…あ、300円です…」
俺は財布から千円札を取り出すと、台の上に置いた。
「おいしそー♪」
秋桜のことを知らない梨加は、目の前の綿菓子に興奮気味だ。
「…………」
秋桜の視線が俺を捕えて離さない。
俺は目を逸らした。
だめだ…落ち着け…
「…おつり」
俺は不機嫌な声で言った。
「あっ…すみません…。700円のお返しです…」
