そんな中、何事も無かったかの様に席に戻っていた山口君。


…いつの間に?


そんな疑問が湧いてくる。



そして彼は、他の従業員達と何一つ変わらない顔をして、当たり前の様に拍手をして笑顔を浮かべていた。






とにかく、入社式は無事終了。


ホールの片付けを終え社長室に戻る。



コンコン


「失礼します。」


ノックをして入室すると、

「沖さん!本当にお疲れ様でした。」


私を見るなり、嬉しそうに微笑む社長がいた。



「とんでもないです。社長の方こそ……あの――。」


言葉が途中で止まってしまった。



だってそこには、見慣れない二人の姿。


常務と、それから山口君。


不思議そうに見つめる私の視線に気づいたのか、社長は微笑みながら言った。




「晴れて公認になれた事ですから、明日からは常務にもここで仕事して頂こうと考えています。」



「――え?」


「宜しくお願いします。」


少し動揺している私をよそに、常務はサラっと挨拶してくる。



「そんな!!こちらこそ、宜しくお願い致します!」

だから、慌てて頭を下げた。




そしてもう一人。



「ふつつか者ですが、末永く宜しくお願い致します。」


そんなふざけた挨拶をしながら、彼は頭を下げる。