車に乗ってエンジンをかける。

どこに行くか、明確な目的地は無かったが、この時の答えは決まっていた。

人が多く居そうな場所、都心方面だな。


そこで何らかの情報を、少なくとも目で見るだけでも今ここに留まって居るよりは状況認識が深まるであろう。

それより思い浮かばず、自ずと答えは決まっていたのだった。



住んで居たのは都心にほど近い、川を隔てた埼玉県の某市、住宅地でマンションは多いが、少なくとも都心では無かった。

そんな土地であったから、目に入って来た情報にも限りがあり、状況認識をするには至っていなかった。


当初、騒いでいた人々も居たのだが、しばらくすると静かになり、人と関わることも、ほぼ無くなっていた。


車の中で、既に恐怖感は無く、漠然とした喪失感、そして、全体的な状況(日本?世界?)に対する興味のみが私の心を支配していた。