「そういえばお名前聞いて無かった。」
「何さんですか?」



「泉です。泉 静江です。」


「泉さん。」
「私は都築 時人です。」「時に人と書いて、ときと!」


「時人」と呼んでもらって良かったのだが、そう呼んでくれとは言えなかった。


思えば、名前をこう呼んでくれなんて人にお願いしたことは無かった。


何か照れくさかったのでそうだったのだが、それはこんな状況であっても変わらなかった。



自分は気持ちを話すことよりも、書いて伝えることの方が得意だった。


人と比べてと言うことでは無い。


直接面と向かうから伝えられることもあるのだろうが、「手紙やメールだから伝わる何かも絶対にある」と信じていたし、それは実体験からの考えだった。