何を言えばよかっただろう。
橘さんも保坂さんを疑っているのだろうか。
俺は止まっていた手を動かして、作業に集中することにした。
途中、昼の休憩も挟み、作業の甲斐あって夕方のドラマの再放送には間に合わなかったが、完全下校までに間に合った。
「姉ちゃんいつ来るの」
「もう近くのコンビニで待機してる」
クラス委員は呼び掛けた。
「みんなおつかれ!男子は悪いけど、運び出すとこまで手伝ってもらっていいかな。女子は戸締まり頼むよ」
はーいと返事して、みんな自分の荷物をまとめた。
おつかれ、と挨拶して俺たちはパネルを運び出した。
コンビニにワゴン車が1台止まっている。
運転席からスラッとした女の人が出てきて、後ろを開けてくれた。
「ありがとな、姉ちゃん。助かった」
「正義のためでしょ。いいってことよ」
そして俺たちに「みんなもお疲れ様」と笑顔を向けてきた。
ヤロー全員、顔がニヤけるのは本能。
明日の朝もここからパネルを運ぶ約束をして解散した。
クラス委員は、自分がやらかしたわけでもないのに
何度も「助かった、ありがとう」を繰り返した。
