「このゲーム機を買ってやったのは誰だ?」
「…」
陽介の勢いが途端鈍くなる。
「このゲーム機をお前に買ってやったのは誰だ?」
「……ちゃん」
「聞こえねぇ」
「にいちゃん!」
やっと俺が逆らえない相手だと気づいたようだ。
「わかってるじゃねえか。借りにわからなかったとしても、セーブなしで電源を落とすまでだけどな」
陽介は顔が青くなった。
「それはダメ!」
小学生ゲーマーの急所なんて、ゲーマーの道を通らずとも、安易に見抜けるものだ。
「じゃあ言うこと聞けるな?難しいことは言ってねぇぞ」
「…わかったよ」
「あと寝る前にゲーム機は兄ちゃんに渡せよ。お前布団の中でもするだろ」
「…」
「じゃあ責任持ってセーブしてやるから歯磨いてこい」
陽介は立ち上がって洗面所へ向かった。
なんだかんだ言ってもかなり眠そうだ。
一部始終を見ていたお袋が「さすが」と笑った。
「私も寝よっと」
お袋の背中を見送って、俺は流しに食器を片付けに行った。
食器を片付けた後、すぐ俺も床に就くことにしたが、陽介とお袋はすでに寝息をたてていた。
