17-セブンティーン-



賢がちらっと振り返る。

焦って俺は「わりぃ」と手を挙げた。

賢は軽く頷いて前に向き直った。


なにやってんだ俺。

思わず賢のイスを蹴っていた。

イライラしてるんだ。
暑いせいだ。腹が減ったせいだ。

先生の話が長いせいだ。

なんて。


自分の雑念に嫌気が差す。

いや、やっぱり先生の話は長い。


「あとなんか…あったかな」


俺のイライラをよそに、先生は至ってマイペースだ。

わかってる。

夏休み前、たくさん連絡事項がある。

ちょっと収拾がつかなくなることも。


あぁ、なんで教室のクーラーって、こう…大きさの割りに働きが鈍いんだろう。


「まぁいいか、今のお前たちには何を言っても耳に入らんな」


先生はそう言って、教室を見渡した。


俺と同じように暑さと空腹が顔に出てる人間が、教室中にいるようだ。


「じゃあこれくらいにしよう、クラス委員」

「きりーつ」


ガタガタガタ……

教室中からキレのないだらだらした音が響く。


やっと、夏休みだ。