確かこの辺に読みかけの本があったはずなんだけど。

少し分厚かったけど、内容は簡単でいい時間つぶしになった。

タイトルは忘れたが、背表紙を見れば思い出すと思ったんだが…


ないな…


忘れたか?
それともここじゃない?
まさか借りられたか?


「なにか、さがしてる、の?」


パッと本棚から保坂さんに視線を移すと、保坂さんはぱちぱちと瞬きしながら俺を見ていた。


「あぁ…いや、ちょっと読んでた本があったから…」


正直、保坂さんが俺になんて声をかけたのかあまり頭に入っていなかった。

返事はこれで適当だろうか。


「なんて、本?」


会話は続いた。

「あー…タイトル覚えてないんだよね」

「そっ…かぁ…」


保坂さんは俺に背を向けてどこかに消えた。

しかししばらくして、1冊握って戻ってきた。


「これ!」

「え?」


勢いで手渡され、受けとると、薄くて小さめな本だった。


「おすすめ!」


保坂さんはにっこりと笑った。