俺は頭を掻いた。
「あーごめん…俺、携帯持ってないんだわ」
俺の返事に橘さんはポカンと口を開けた。
「アナログ人間だからさ」
ははは…なんつって。
違う、貧乏だから今どき携帯を買う余裕がないのだ。
このご時世、がきんちょからじーさんばーさんまで携帯持つこのご時世
アナログ人間だから携帯持たないってどういう理由だよ?
どこの時代の人間だよ?
と我ながら出来の悪い言い訳にツッコミ。
相変わらず橘さんは固まっている。
そりゃそうだ。カルチャーショックもいいとこだろう。
「家電でいいなら教えとくけど?」
とか言ってみると、生気を取り戻したように彼女は頷いた。
「あっあのっ!」
「え?」
「いつなら電話OK?」
「え…いつでも…?」
「だって西原くん、バイトしてるよね?」
「うん…まぁ」
「いつ家にいるの?」
「え?だいたい明るいうちはいるよ?」
俺の答えに「そっかぁ…」と小さく頷き、橘さんはポケットからピンクの携帯を取り出した。