17-セブンティーン-



もう一度、角から顔を出して様子をうかがうと

2人の姿はなかった。

あいつ…ドラマの見すぎもいいとこだ。


俺は保坂さんに向き直る。

困った顔も引き止めたのも

話の途中だったから
離れていくのが寂しいから

そんな理由も考えられた。


でも多分ちがう。


「いつから?」

「な…なに、が?」

「賢は1年の終わり頃から、たまに授業を抜け出すようになった…その頃から?」


彼女は知ってた。

賢が女の子とばっくれてることを。

そしてその女の子は彼氏がいて

その彼氏はバスケ部のキャプテンで

それは賢の先輩にあたる人で


これは誰かに知られたら非常にまずいということを。


保坂さんは何も言わずに立ち上がり


「なにも、しらな~い」


と残して元来た道を戻った。

俺も立ち上がった。


「保坂さん」


その背中に投げ掛けると、一瞬立ち止まり、何もなかったようにまた歩きだした。

彼女は俺に何一つ答えをくれないどころか

初めて無視した。