思わず口を開こうとしたら
遠くで授業開始のチャイムが鳴った。
「あ…」
保坂さんの背後、ずっと向こうに見慣れた姿を見つけた。
俺につられて保坂さんも振り返る。
何も見つけられなかった彼女は軽く首を傾げた。
「賢…?」
彼女は俺の一言に反応した。
もう授業中のはずだが
賢は保坂さんほどではないが、ドロップアウト癖がちょっとある。
なんとなく気になって、姿を追って行こうとすると
「…」
「…」
「え…なに?」
鞄を握られていた。
なぜだか彼女は少し困ったような顔をしていた。
「放してくれる?」
俺の一言を聞いて手を放し、彼女は困った顔のままふせてしまった。
そのまま彼女から離れて、
角を曲がって曲がって曲がって追いかけてみると、やっぱり賢のようだ。
名前を呼ぼうとして、やめた。
「賢ちゃん」
「ごめんね、待った?」
「来ないかと思った」
奥から女の子が表れて、お互い腕を腰に回して抱き合っていた。
えーっと…
これってもしかしてもしかするともしかするのか?
「来ないわけないだろ」
賢はその女の子と、さらに距離を縮めて――…
俺、回れ右←
からの冷や汗
