保坂さんはあのピカピカの爪に
すごく興味を持ってる。
すごく心を奪われてる。
「ほんとっ?これね~テープで止めてるからほらっ!簡単にはずせるんだよ」
そう言ってお姫さまは、ぺりっとピカピカの爪をはがし
保坂さんの爪にかぶせた。
「すごいーきれいー!」
「亜美ちゃんにあげるよ!」
「ほんとですか?ありがとーうございますー」
保坂さんは幸せそうに笑った。
お姫さまも10本の指からピカピカの爪をはがし、保坂さんの指につけていた。
幸せそうだった。
俺にはあの爪の良さがわからないけど
保坂さんは、そのへんの《女の子》と変わらなくて
それが俺には衝撃的だった。
「保坂さん、西原くんプリント持って来てくれたんだって」
永野先生が、背後から声をかける。
俺はハッとして、保坂さんにプリントを渡した。
「ありが…」
「失礼しました」
ガラガラガラピシャッ
言い終わる前に保健室を出た。
感じが悪いのはわかっている。
でも気にしてる余裕がなかったし
気にする必要もないと思った。
年上のお姫さまに
同い年しかも同じクラスの宇宙人…
数分しか滞在していないのに
すごく居心地の悪い所だった。
