「あの子…保坂さん」
先生が再び口を開いた。
「意外とよく笑うだろう」
顔を上げると、先生と目が合った。
保坂さんの姿を思い浮かべると、いつもドロップアウトする姿や、うつむきながら教室に入っていく姿
そしてテスト前に、俺に向かって手を振ってくれた姿が最後に浮かんだ。
「それになお前たちなんかより、ちゃんと敬語使えるんだぞ~」
先生は得意気に笑っていた。
なんとなく、あんまりいい気はしなかった。
直接的なことは言わないが、先生は俺が保坂さんと仲良くなったと思っている。
それが今の俺には何だか抵抗があった。
だからといって、俺は保坂さんに意地悪をされたわけでもないから
きっとまた普通に挨拶したり話したりしてしまう。
なのに仲良しと思われたくないなんて、すごく矛盾している。
ただ、いい顔してるだけ。
当たり障りなく、いい人ぶっているだけ。
俺ってなんてイヤな奴なんだろう。
