「じゃあ…保坂さん、また月曜日ね」
「はい、さよなら、せんせ」
保坂さんは先生に頭を下げたあと、俺の方を見て
「またね、にしはらくん」
と、いつかのように手を振ってくれた。
「うん、またね」
俺も手を振った。
保坂さんは車に乗り込み、お母さんがまた頭を下げて、運転席へ乗り込んだ。
車はあっという間に俺たちの前を通り過ぎ、すぐに見えなくなった。
先生と2人になってみて初めて、気まずさを感じた。
意外だとか、どういう風の吹き回しかとか、言われるかもしれない。
じゃあ俺もこれで…と言う前に
先生が口を開いた。
「西原」
「へ、はい」
「昼はもう済ませたか?」
予想外の問いかけに、理解するのに時間がかかった。
「あ、いえ、まだ」
「そうか」
俺の答えに、先生は頷いた。
「今から近くの定食屋に行くつもりなんだが、つき合わないか?ご馳走するよ」
「いいんですか?」
先生は満足そうに歩き出した。
「あぁ、あそこの生姜焼き定食は絶品なんだぞ~食ったことあるか?」
「いえ、行ったことないっす」
「そうだったか。でも昼の相手が出来てよかった」
先生は笑った。
