17-セブンティーン-



着信履歴を出して、通話につなげると、彼女は携帯を耳にあてた。

音がかすかにもれていて、ガチャっと音がするやいなや、相手の声が聞こえた。


「うん…うん…はーい……」


短い返事をして携帯を切り


「ママ、きたって」


嬉しそうに携帯をシャツの中に戻し、彼女は鞄を取った。
もう保坂さんは《ママ》を《お母さん》と言い直すことを忘れている。

俺も荷物を取って、2人で教室を出た。


太陽は真上にあって、1番暑い時間帯だ。

校門に向かうと、車の近くで麻生先生が女性と話していた。


「亜美」


女性がこちらに気がついて、手を上げた。
保坂さんは手を振り返して、小走りで女性の元へ行った。

あの人が保坂さんのお母さん…。

保坂さんのお母さんは、俺を見て、頭を下げてくれた。

俺も頭を下げた。


「にしはらくん」

「クラスメイト?」

「うん」

「まぁ、はじめまして。亜美の母です。いつもお世話になっています」


保坂さんのお母さんは、改めて俺に挨拶をしてくれた。


「いえっ、ぼっ僕の方こそ」


俺も慌てて頭を下げた。