着信履歴を出して、通話につなげると、彼女は携帯を耳にあてた。
音がかすかにもれていて、ガチャっと音がするやいなや、相手の声が聞こえた。
「うん…うん…はーい……」
短い返事をして携帯を切り
「ママ、きたって」
嬉しそうに携帯をシャツの中に戻し、彼女は鞄を取った。
もう保坂さんは《ママ》を《お母さん》と言い直すことを忘れている。
俺も荷物を取って、2人で教室を出た。
太陽は真上にあって、1番暑い時間帯だ。
校門に向かうと、車の近くで麻生先生が女性と話していた。
「亜美」
女性がこちらに気がついて、手を上げた。
保坂さんは手を振り返して、小走りで女性の元へ行った。
あの人が保坂さんのお母さん…。
保坂さんのお母さんは、俺を見て、頭を下げてくれた。
俺も頭を下げた。
「にしはらくん」
「クラスメイト?」
「うん」
「まぁ、はじめまして。亜美の母です。いつもお世話になっています」
保坂さんのお母さんは、改めて俺に挨拶をしてくれた。
「いえっ、ぼっ僕の方こそ」
俺も慌てて頭を下げた。
